「断食療法50年で見えてきたもの」甲田光雄著 

断食療法50年で見えてきたもの―人類は愛と慈悲の少食へと進化する

症状は疾病か療法なのか?

甲田療法というのは、甲田先生の師である西勝造医師の考案した西医学(西式健康法)に基づいている。西医学は症状即療法を基本的な見解としている。例えば風邪の熱について、風邪のウィルスが体に侵入して増殖を始めると、そのウィルスを異物とみなして排除するため、インターフェロンのようなものが増えてくる。そのインターフェロンが生産されるとき、発熱という現象が現れる。この場合の発熱は自分の体が風邪を治療するために行っている療法とみることができる。


腰痛の場合、腰が痛んできたら、私たちの体内ではその部分の故障を治すために血液の流れをよくし、栄養分を十分に送り込み、また老廃物を完全に回収するなど、大仕事が始まる。そこで患者が早く痛みを取りたいので何か注射を打ってくれ、と医者に泣きついたとする。すると痛みはとれたとしても、その注射のために腰の痛んだ部分の血管は収縮し、血液の流れが悪くなることがある。血液の流れが悪くなると、その部分で産出された老廃物などを完全に回収することができなくなり、結果的に腰痛の治りは遅くなる。


しかも痛み止めの薬は胃や腸などの血管も狭めてしまうため、胃粘膜の血流も悪くなり、抵抗力が落ちてくる。そのような薬を頻繁に使っているとどうなるか。例えばリウマチの患者さんのように毎日、何カ月も何年も痛みが続いていると服用する薬も長期にわたり、結果として胃腸などに障害が出たり、胃潰瘍になる人も少なくない。


リウマチの患者さんが、薬の長期服用により、胃を壊すというのは、事実だ。私が以前派遣で勤務していたある製薬会社では、リウマチの患者さん向けの消炎鎮痛剤を販売していたが、長く飲んでいると胃潰瘍になるというのは、常識のように語られていた。そしてそのための胃薬のマーケティング部門もあったと思う。


高熱の赤ちゃんに強い解熱剤を使った結果、意識がなくなり命を落としてしまうこともある(ライ症候群)。


イギリスの著名な医師であったトーマス・シデナム(Thomas Sydenham 1624-1689)は、「疾病とは、有害な素因を駆逐するために、自然が採用する方法である。」と言っている。