「肥満と飢餓−世界フード・ビジネスの不幸のシステム」 ラジ・パテル著 その1

肥満と飢餓――世界フード・ビジネスの不幸のシステム
ラジ・パテル
作品社
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最初にこの本がアメリカで2007年に出版された時、序章で「8億人が飢え、10億人が太りすぎているという歴史上初めて生じた現象」について書かれた。 その後2010年に日本での発刊に際しての日本語版序文では、「10億人以上が飢えに苦しみ、10億人以上が太りすぎ」という数値に上がった。 2008年の世界食料危機により、飢餓人口は2億人増え、2009年には10億2000万人となった。

太りすぎの人々と食料不足の人々は、農地から食卓に食糧を届けている「食料供給産業(フードシステム)」を通じて繋がっている。 食料を販売している企業は、利潤追求という動機に基づいて私たちが何を食べるかを決定し、制約し、私たちの食に対する考え方に影響を与えている。


10億人以上が飢えている。 日本ではペットの犬や猫が食べ過ぎが原因で病気になっている今この時代に、10億人以上の人間が飢えている。 そしてそのことを本やインターネットを通じて多くの人が「知っている」。 この間まで8億って言ってたのに、2億人も増えたんだ、ぐらいの驚きはあっても、次の日にはそのことはもう頭にはない。 異常すぎる事態の中にいると思考が麻痺するのか、考えた所でどうにもならないと思って気にしないのか。 飢えている人が何億人もいる事が「普通」になってしまっている。 国連とかいろんな機関が何かしてくれているだろう、所謂先進国の政府がそれなりに食料支援もしているだろう、個人が出来ることは関係する所への募金ぐらいと思ってしまうのか。


この本はまだ読み始めたところだけど、飢餓の背景にあるのは、戦争や干ばつなどだけではない。 むしろ人間のエゴの方が大きいということが感じられる。 私たちに出来ることがあるかどうかというより、私たちの意識が変わることが一番大事だという気がしてくる。


ずっしりと重い本だが、中身も重い。 30代の若さでこれだけの内容の本を書く著者はすごいと思った。

「肥満と飢餓−世界フード・ビジネスの不幸のシステム」 ラジ・パテル著 その2