「ありのままの子育て−自閉症の息子と共に(1)」 明石 洋子著

ありのままの子育て―自閉症の息子と共に〈1〉
明石 洋子
ぶどう社
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私の息子が自閉症だと気がついたのは今から6年前、2歳半の時。 その後多くの本を読み、多くのサイトを訪れ、本当に救われる事が度々あった。 今もし子供に知的・発達障害があるかも?と感じていたり、周りのお子さんが周囲になじめず困っていたりしたら、ぜひこの本をおすすめする。


明石さんの息子さん、徹之さんは重度の自閉症なので、アスペルガー症候群や軽度発達障害の場合は必要なサポートの中身が変わってくる。 が、洋子さんがどのように徹之さんを育ててきたかは、知的・発達障害児を持つかどうかにかかわらず、ひとりでも多くの親、医療従事者、教師、サポーターに知って欲しい。 徹之さんが小さい頃は、今と違って自閉症は親の育て方が悪い、と医師に叱られ、当然のごとく全寮制の施設に入れられた時代。 その中でわが家で育て、地元の学校で育てた(当時は養護学校というものもなかった)。 


私を含め、多くの親が明石さんの本を読んでよかった、と感じるのは、明石さんが毅然とした態度で徹之さんを育てたというより、迷いながら手探りで進んでいった様子に共感するのかもしれない。 周囲の理解がないのはもちろん、母親である自分でさえ息子のことがわからない、何でそんなことをするの?、どうすればわかるの?と泣きながら過ごした日々を本当にありのままに綴っている。 


ハンディのある子供を持つと(と言っても状況は千差万別だけど)、自分や配偶者の親や身内、友人や近所の人の何気ない言葉にショックを受けたり、子供をどう支えてあげるのがベストなのかわからなくて悩んだり、きょうだいが学校でいじめられたり、預ける所がなくて仕事に就けないとか、そういう小さな心労が積り、一人になることもままならない日々で泣く事も出来ず、「感情」がないかのように暮らすようになっていく事も多い。 そんな時に大先輩の洋子さんが、自分と同じように泣いたり、おろおろしたり、夫に怒ったりする様子を読みながら、涙が止まらなくなる。 それは辛い、悲しい涙ではなく、暗い雲のすきまから太陽が差し込んできたかのような、温かいものに包まれたような安堵と、きっと大丈夫という明るい気持ちになれた嬉しさの涙。


水を触るのが好きな徹之さんを見ているうちに、そんなに水が好きなら、とトイレ掃除のお手伝いを思いつく。 その後成人した徹之さんは川崎市の職員になり、老人ホームで浴室清掃の仕事を担当。 手抜き知らずの徹之さんが磨いたタイルはピッカピカと評判になる。 「たまに力が入りすぎてタイルが割れます(笑)。」と周囲の人に苦笑されながら。