陸上=両足義足のピストリウス、世界選手権の出場資格取得

ロイター

[ローリー(米ノースカロライナ州) 19日 ロイター] 陸上短距離選手で両足が義足のオスカー・ピストリウス南アフリカ)が、19日にイタリアで行われた大会の男子400メートルで自己最高の45秒07をマーク。8月に韓国の大邱で開催される世界選手権の参加標準記録を上回り、出場資格を得た。

 レースを終えたピストリウスはロイターの電話取材に応じ、「夢のようなレースだった」と述べた。両足を切断した選手が世界選手権の短距離レースに出場するのは史上初となる。

 同選手はこれまでパラリンピックで複数の金メダルを手にしており、健常者の大会に出場できるよう求めていた。2008年にスポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場を認める裁決を下したが、同年の北京五輪では参加標準記録を突破できず、出場できなかった。

以下の記事はカンパラプレスより抜粋:

(ピストリウスは)07年7月、初めて健常者の国際大会に出場する。400mではスタートで出遅れたが、最後の直線で6人を抜き2位に入り、世界を驚かせた。一方で、義足は健常者よりも有利に働くので競技規則違反だと批判も浴びた。義足が必要以上に長く、ストライドを伸ばすのに役立つとの疑惑も囁かれた。


国際陸上競技連盟(IAAF)は同年、「非使用者よりも有利になるバネや車輪など、人工的装置の使用は禁止する」という条項を競技規則に付加した。さらに、IAAFの依頼でドイツの研究者がピストリウスのレースを分析した結果、義足のほうが蹴った力を効率的に推進力に使え、乳酸等疲労物質による力のロスも少なく、健常者より有利、という見解を発表した。


これに対し、ピストリウスは、「義足はスターティングブロックが使えず、コーナーでは不安定で減速を余儀なくされる。総合的に見れば有利ではない」と反論。だが、IAAFは分析結果を根拠に08年1月、北京五輪を含むIAAF主催の国際大会への出場資格は、ピストリウスにはないと決定した。


ピストリウスは、「不正をしてまで健常者と戦うつもりはない。もし本当に義足の有利性が証明された時は走ることを辞める。だが、この研究は不十分であり、現段階ではIAAFの決定には納得できない。夢の実現のために戦う」と宣言。国際スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した。


CASは5月16日、義足が健常選手より有利とするには証拠不十分として、IAAFの決定を破棄。ただし、将来的に十分な証拠が発見された場合は再検討の余地ありとした上で、ピストリウスに健常者とのレース出場を認める裁定を下した。一度は閉ざされたかに見えた北京五輪への扉が開いた。

ピストリウスはスイスの大会で400m自己ベストの46.25秒で走り、3位に入ったが、北京五輪の参加標準記録には届かなかった。

北京五輪の夢は破れたが、前向きな気持ちは健在だ。「2012年のロンドン出場のほうが北京よりも現実的かもしれない。スプリンターは一般的に26歳から29歳でピークを迎える。僕はロンドンでは25歳。それに、準備期間も十分取れるから」

「義足の方が有利だ」と本気で批判する人がいるというのが信じられない。 


彼は、「障害があるんじゃない。 ただ足がないだけ。」と言っている。 この言葉、深い。