ミャンマーのアンタッチャブル

シノドスジャーナル

「難病女子」の大野更紗さん執筆の記事。 

「ロヒンジャ」と呼ばれる少数民族をご存じだろうか。ミャンマー人のいる場で、ロヒンジャの話題を持ち出すのは最大のタブーである。国籍すら持てない、存在を認識されない「棄民」だ。


ヤンゴンに立ち並ぶ商店には、最近「876」という看板や表示が掲げられている場所がよく見られるようになったという。8+7+6=21。「21世紀」を意味するこの看板は、ムスリムであるという証である。ミャンマー国内に居住しているムスリムは、主に5つのグループにわかれている。「パンディー」と呼ばれる回教徒系、「パシュー」マレー系、インド・パキスタン系、ラカイン州の一部に先住するグループ、そして「ロヒンジャ」だ。


多民族国家であるミャンマーの市井で、ムスリム系の住民に対する反発は古くから強い。そのなかでも、もっとも苛烈な偏見にさらされているのがロヒンジャだ。


ミャンマーバングラデシュのあいだ、チッタゴン地域には「壁」がある。国境のナフ川沿い、数十キロメートルにわたって、ミャンマー政府が壁を建設している。この壁は、バングラデシュ側に流出しているロヒンジャ難民への差別の象徴だ。


バングラデシュ側には、約5万人のロヒンジャ難民が居住するキャンプが4つ点在する。2つは公式、もう2つは非公式のキャンプだ。さらには、キャンプの外には約20万人のロヒンジャが生活している。バングラデシュ側でも、ロヒンジャへの反発心は強い。彼らは住む土地も国籍も持たぬ、アジアのなかで忘れ去られた「ステートレス・ピープル」なのだ。経済問題の傍らには、こうした難民問題が横たわっている。


ミャンマーODA再開という政策に対して、メディアではアウンサンスーチー氏とNLDの動向ばかりが取り上げられる。しかし、今回垣間見た為替や少数民族の問題などをとっても、ミャンマーという1つの国が抱えている問題はどこまでも重層的なように、アジア情勢は今日、政治面、経済面、あらゆる側面で急速に変動している。一面的なアジア観から脱却せねばならない。


「ロヒンジャ」という言葉、存在を初めて知った。 バングラデシュ側の難民キャンプに約5万人、キャンプの外に約20万人が生活していると言う。 尋常な数ではない。 あるムスリムグループに属するというだけで国籍を持つ事すら許されず、困難な生活を強いられている人達がいるなんて異常な事だ。 彼らが何をしたというのだろう。 


私達は異常で残酷な事が敷き詰められた世界で暮らしていて、神経が麻痺しているのか。