「食べること、やめました」−1日青汁1杯だけで元気に13年 森 美智代著 その1

著者の森美智代さんは、21歳の時に脊髄小脳変性症にかかった。治療法はなく、余命5年の宣告を受ける。縁あって甲田先生の診察を受け、「治る」と言われ、甲田療法による食事法などを始める。この本が出版された時点で、1日の食事が青汁1杯という生活が13年に及び、鍼灸師として活躍されている。


実際に本を手に取って読むまで、ヨガの先生みたいにスリムな人を想像していたが、写真を見て驚いた。ふくよかなのだ。青汁1杯で、家でじっとしているわけではない。仕事を持ち、活き活きと生活されている。毎日5種類の野菜をミキサーにかけ、網で繊維をこして青汁を作って飲む。カロリー換算では約60キロカロリー。かなり限られた食材であり、不足しているはずの栄養素も多い。健康な体を維持できる食事内容ではないと、一般的な栄養学の常識では考える。が、森さんは元気に毎日を送っている。どうしようもない事実なのだ。


この本を読んだあとに、他の少食、微食、不食を実践している本を数冊読んだ。わかったのは、森さんのような人は特別に珍しくない。ほとんど食べないで元気に生活している人は実際には結構いるのだ。そしてその人たちは「食べるのをやめたり、ごく少量にしておくと、体が疲れない。頭もさえるし病気もしない。お金もあまりいらないし、余計な調理をしないから電気もガスもほとんど使わない。体も消化吸収のために多くのエネルギーを消費せずにすむが、他の面でもエネルギーを節約できる。いいことしかない。」と言う。


あまり食べないでも、食べる内容が体に良いものである限り、人間は元気に生きていけるのだろう。非科学的だと非難する人も多いし、「一時的に良くても、そのうち体を壊す。」と警告する人もいるようだ。だが、仮に何年かかけて調査・研究をして、一日一食でも大丈夫だと証明されたとして、実践する人はどのくらいいるだろうか。やってみようと試みた人のうち、どれくらい続けられるだろう。「食べる快楽」を知った後で、それを自分の生活から放棄するというのは至難の業だ。私も含めて、多くの人は必要だから食べているよりも、「おいしいから」「ひまだから」「もったいないから」「すすめられたから」そしてストレス発散だったり、イライラを鎮めるためだったり、何らかの不快からの一時的非難の為に食べる事も多いと思う。そのような食べ方をしている人は、かりに素晴らしい食事法だと頭ではわかっていても、しばらく続けているうちに、急なストレスやちょっとしたきっかけなどによってあっさりと以前好きだった甘いものや刺激の強い食べ物などに走ってしまう。


甲田先生は「病気治しは癖治し」と言われた。食べる事で気を紛らわせるという自分の「癖」を治さないといけないのだ。が、これが本当に難しい。