「成人病の真実」近藤 誠著 その1

成人病の真実 (文春文庫)
近藤 誠
文藝春秋
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「患者よ、がんと闘うな」の近藤誠氏の本。随分批判も受けている人だけど、私は応援派。第3章の糖尿病の所で、1991年に不適切な治療のために亡くなった23歳の青年の遺族が訴訟を起こした件について詳しい記述がある。この時に裁判所に選ばれて鑑定人となった順天堂大学の河盛教授の鑑定書や法廷での証言が判決を左右した。この鑑定書の内容は素人の私が見てもおかしな内容で、実際、河盛教授が救命救急医向けに書いた医学雑誌にはこの鑑定と矛盾することを書いている。


近藤氏は「河盛教授は偽証した」と断言するが、その偽証によって遺族は敗訴した。河盛教授は以前インスリンを扱う製薬会社で働いていた私でも知っているぐらい「糖尿病の権威」だ。判決にも河盛教授の言葉が引用されていたとのこと。 現役の医師が医療事故の裁判において、被告病院の不利になるような証言をすることは難しいだろう。だけど、病院の処置ミスで亡くなり、その上そのミスを権威ある医者の鑑定で隠ぺいするということが、許されていいのだろうか。


この時に被告病院(大阪府内の民間病院。河盛教授は大阪大学医学部出身)がとった処置がおかしいことが、河盛教授にわからないはずはない。なぜ病院をかばうような鑑定をするのだろう。これは組織の問題か。病院も大きくなるとだめなのだろうか。
「成人病の真実」近藤 誠著 その2