社会的擁護に関する連載 その1

【救いは差し伸べられるのか】(1)里親という選択肢
産経新聞

親に恵まれない子供を公的に守り育てる「社会的養護」のうち児童養護施設乳児院など施設で暮らす子供は厚生労働省の平成20年の調査で3万7991人。半数以上が虐待の末に保護された。施設は都市部で満員状態の上、そもそも虐待の傷を癒やす専門施設ではない。職員は懸命に子供たちを育てているが、対応には限界が指摘されている。

里親制度は昭和23年からある。親元で育つことができない18歳未満の子供を、自治体に登録した里親が児童相談所から委託され、自宅へ引き取って育てる。養育費として里親手当月7万2千円や生活費月4万7680円、教育費、医療費などが公費で支給される。

イーストアングリア大学のジューン・ソバーン名誉教授の2007年の研究によれば、欧米豪13カ国での社会的養護のうち里親委託の占める割合は米国で69%、英国で65%。最も高いアイルランドは84%、最低のドイツでも47%だった。

一方で、わが国は「施設養護から家庭的な養護への移行が必要」として里親制度を推進しているが、平成20年に全国の里子は3611人と8%にすぎず施設養護の10分の1に満たない。