社会的擁護に関する連載 その2

広がらぬ里親制度 欧米と異なる「行き先」
産経新聞

わが国で虐待から保護された子供の「行き先」は欧米諸国と大きく異なる。


青山学院大学での教職の傍ら自らも里親として里親制度の普及に生涯をささげ、今年1月に死去した故庄司順一教授によれば、欧米にもかつて孤児院があったが、施設の弊害と家庭的養護の重要性が指摘され1970年代に縮小、閉鎖されて里親制度へ転換していった。施設が主体のわが国は例外的だという。


広がらない理由としてキリスト教など文化的背景の違いや、法的に親子になる「養子縁組」と混同されていることが挙げられる。認知度も低く、インターネットで「里親」と検索するとペットの里親ばかりが表示される。「人間以外に里親という言葉を使わないで」と訴える運動さえある。

児童相談所の職員出身で日本社会事業大学の宮島清准教授(52)=ソーシャルワーク=は「里親委託が進まないのは、施設か里親かを決定する児童相談所の態勢が整っていないからだ」と指摘し、こう続けた。


「里親なら施設より整備費もかからず委託費も少なくて済み、何より子供に好ましいと分かっている。だが児童相談所にとって子供を里親へ委託することは、電話連絡と資料送付程度で済む施設へ『送る』ことよりはるかに手間がかかる。親権を持つ実の親も里親だと『子供を取られる』と思い施設を希望する。職員は施設を選びがちになる」


里親登録する40代の女性は「登録してから2年間、一度も子供と『お見合い』したことがない」という。


児童相談所の職員からは『実の親が里親委託を簡単に了承しない』と言われるだけ。一方で、親権のある実の親やその愛人の手によって毎週のように子供たちの命が消されている」

心の専門治療が必要な子供を受け入れる「情緒障害児短期治療施設」に勤めた経験を持つ子どもの虹情報研修センターの増沢高研修部長(49)は「施設より里親がいいと誰もが思うし私もそう思う。だが『普通の家』を知らない子供には難しい面もある」と話す。


親から熱湯をかけられた子供は、風呂をものすごく恐れる。逆に「お風呂が唯一の安心の場」という子供もいる。増沢さんは「十人十色で『虐待にはこの対応』とはいかない。里親では手に負えない場合もあり、現実に里親から施設へ行く子供もいる。その子供一人一人を丁寧にみる必要がある」という。


虐待から逃れてきた里親家庭で、里親から虐待される子供もいる。厚生労働省によると平成21年度に全国で9件が報告されている。

社会的擁護に関する連載 その1

今この瞬間にも親に殴られ、熱湯をかけられている小さな体が悲鳴をあげているのかと思うと泣きたくなる。 傷ついた心と体を癒す方法などないと思う。 癒されてよいものとよくないものがあると思う。