「腸を休ませると免疫力がアップする」松田保秀著

  • 免疫バランスを示すCD4とCD8の比率

腸に詳しい専門医の本で、とてもわかりやすく勉強になった。特に、今まで腸というと大腸をイメージしていたが、小腸の重要性も知ることができた。 胃と大腸は全摘が可能だが、そのどちらにおいても小腸が代役を果たす。小腸は全摘が出来ないが、普通6〜7mあるうちの9割を切除しても大丈夫らしい。


小腸の終わりあたりの場所にパイエル板といわれるリンパ組織がある。腸には体の約6割のリンパ組織があり、最大のものがパイエル板。リンパ組織からは免疫を担う成分(体の防衛隊にたとえられる)が分泌される。マクロファージ、白血球の好中球、リンパ球、Nk細胞、補体などの面々が細菌やウィルス退治に精を出す。


好中球は細菌などの異物を食べるとすぐお腹がいっぱいになり、これ以上は食べられないという状態になると自ら死んでしまう。好中球の死骸のかたまりが傷口などにみられる膿。


マクロファージと好中球は細菌などの異物を見つけるとすぐにそれにくっついて食べてしまう。防衛隊の駐屯地にあたるリンパ節に待機しているが、血液にのって全身のパトロールも行う。腸の粘膜と腸壁には血管が細かく通じているので、防衛隊のパトロールにより監視は怠りない状態となっている。マクロファージには貪食(どんしょく)細胞、あるいは大食細胞というニックネームがつけられており、細菌などの異物だけでなく、好中球の死骸である膿まで食べる。


リンパ球は防衛隊の中でも強力なパワーを持っている。骨髄(Bone marrow)から作られるのがBリンパ球。胸腺(thymus)から作られるのがTリンパ球。Bリンパ球は細菌などの異物を見つけるとすぐそれにくっつく。先述の好中球やマクロファージが先にかけつけて食べ始めているが、Bリンパ球がそれに加勢する。Bリンパ球の武器が抗体。抗体には免疫グロブリンのA、G、M、D、Eなどがあり、略してIgAとかIgGとか呼ばれる。


Bリンパ球は抗体を作る働きを助け、さらに異物を攻撃するTリンパ球を作るのがT細胞。T細胞にはヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、キラーT細胞などがある。ちなみにリンパ球には40以上もの仲間がいることがわかっていて、それぞれにCD何番という番号がつけられている。その中でもCD4は免疫の働きのアクセル役、CD8はブレーキ役の指標として捉えられている。


アクセル役のCD4の働きのほうが活発になれば免疫は過剰となり、免疫異常と呼ばれる自己免疫疾患を発症。(花粉症、リウマチ、膠原病等。クローン病潰瘍性大腸炎なども含まれる。)ブレーキ役のCD8の働きのほうが活発であれば、免疫システムがうまく働かず、細菌やがんなどの病気におかされることにつながる。免疫のバランスがよいといわれる状態はCD4とCD8の比率がちょうどよい状態のとき。CD4の数値をCD8の数値で割って、1.1〜2.1の範囲が正常とされている。これより低い場合はブレーキのききすぐ、高い場合はアクセルの踏みすぎということになる。


NK細胞はナチュラルキラー細胞の頭文字をとったもので、名前の通り、主な仕事は体にできたがん細胞にがぶりとかぶりついて殺してしまうこと。NK細胞は私たちの体内に約50億個存在するといわれる。私たちの体では毎日3000〜5000個のがん細胞が発生しているといわれるが、がん細胞を成長させずに退治できるのはNK細胞の働きがあるから。


補体は免疫グロブリンの働きを補うもので、前出の仲間のうちでも一番破壊力の強いミサイルのような武器を持つ。どのような事態がおきても補体がいるから安心できるという状態になっている。


個々人の免疫力を測るひとつの指標がCD4とCD8のバランスになるが、「笑い」がその比率を改善した(免疫力を高めた)というデータがある。なんばグランド花月でボランティアの男女19人に3時間、漫才や落語などで笑ってもらい、血液中のCD4とCD8の数値およびNK細胞の活性値を計測。 その結果、CD4とCD8の比率が正常より高かった人は下がり、低かった人は上がった。同様にNK細胞の活性地も高い人は下がり、低い人は上がった。


「笑う」ことの効用はいろんな本にも紹介されているが、あらためて笑うことは体にとって大切なことだと認識した。「笑う」と体は元気になる。「笑ってる場合じゃない」ときほど、笑うことが必要になる。